本文
【特集】宮津の産業が拓く未来
~伝統を継承し、新たな挑戦を育む~

「住みやすいまち」であるためにはどんなこと・ものが必要でしょうか。インフラ、医療、教育など、多岐に渡ります。今月は、「産業が活発に営まれていること」に注目して、宮津の働く現場をお届けします。
住みやすい豊かなまちであり続けるために
宮津市では、古くから恵まれた自然環境の中で多様な産業が育まれてきました。近年では訪日外国人旅行者も多くなり、飲食店や宿泊施設など、様々な分野での創業が増加。長年愛されてきた店舗と新しい店舗が融合し、まちに心地良い賑わいが生まれ始めています。
賑わいと活力にあふれたまちへ
宮津市には、人口減少という大きな課題がありますが、美しい自然景観や豊かな食、歴史・文化を求めて多くの人が訪れるポテンシャルのあるまちです。そして、競争が激しい都市部とは異なり、独自のアイデアや新しい取り組み・事業に挑戦しやすい環境もあります。
そんな宮津というフィールドでは、伝統をさらに発展させようと汗をかく人に加え、起業や事業拡大、新たな技術の活用など、挑戦を続ける人々がいます。
代々受け継がれてきた「まちの礎」である産業が今後も継続されること、そして、地域で新たなチャレンジが生まれることが、活力のあるまちづくりにつながります。
数字で見る宮津の産業
「産業」という観点に立った時、宮津はどのようにみえるでしょうか。数字で見てみましょう!
1)産業別就業者数では3次産業が8割

宮津市の産業別就業者数(令和3年)を見ると、宿泊や飲食、小売業や運輸、金融などサービス業からなる3 次産業が81%を占めます。一方、製造業、建設業などの2 次産業は17%、農林水産業などの1次産業は2%です。
2)事業所数・従業員数は減少を続けている
約10 年間で事業所数は約330 減少、従業員数も2,250 人減少。就業の場の減少や、労働力不足が深刻な課題です。
その一方で...
65 歳以上の就業者数は平成27年から令和2年で125 人増加。働く年齢層が広がっています。
参考:国勢調査( 平成28 年、令和2年)
3)過去4年で44 件の創業等を支援
令和3年度から令和6年度までの間に、44 件の新規創業・起業を支援し、飲食や宿泊事業など、様々な事業へのチャレンジを応援しています。
さらに、新たな起業のための実践を学ぶ「未来天橋塾」には延べ47 人が参加!次世代を担う挑戦の芽が育っています。
【まとめ】
労働力不足が深刻な課題。多様な人材が働きやすい環境づくりや業務の効率化などが求められています。一方、市内では多くの新たな事業も生まれています!
宮津で働く人たちに会いに行ってみた!
~制度整備、創業、事業拡大、新技術導入―― 色んな人が支える宮津の産業~
新しい事業を起こした方や、時代に合わせて新たな技術・制度を取り入れてきた事業者さんなど、多様な分野で輝く人々の取り組みの様子をお届けします。
市内の事業所紹介はこちらから
「見える成果」を励みに切り開く土地と未来
M A E D A O L I V E F A R M
前田 純さん・前田 直子さん
天橋立を真横から臨む高台にオリーブ農園を構える前田さんご夫妻。5年目を迎え、「今年は実の付きが良く、収穫量がこれまでで一番でした。物産展でもオイルの味も評価してもらえ、ここに来るまでもどかしい思いもしてきましたが道が開けたと希望を感じています」と純さんはそのやりがいを話します。農業の経験がないなか、オリーブ作りを始めた前田さんご夫妻。広大な敷地に広がる樹木の枝の剪定、獣害対策、冬は、一日かけて木に積もる雪を払うなど、多忙な日々が続きます。
こうした日々を過ごす中で「農業は良くも悪くも自分がやったことが結果として目に見える」と話す純さん。今では、整備された農園ですが、元々は雑木林。地道に開墾し、オリーブを植え続けてこられました。「地元の方に『頑張ったな』と言ってもらえると報われます」と嬉しそうに口を揃そろえるお二人。高齢化により維持ができなくなった農地を引き継いだり、地元の古い手法を継承した米作りにも取り組んでおられます。直子さんは、「これまで地域の中で続けてこられた活動を、次の担い手へとつないでいけると良いなと思います。宮津では、個人事業主の方とつながる機会も多く、未経験でも創業に挑戦できる場所だと感じています」と話します。
農場では、最近、コーヒーの提供も始め、絶景を眺めながらゆったりとしたひと時を過ごせます。「キャンプもできないか模索中です」と笑顔のお二人。自分たちで切り拓いた農場を舞台に、無限の可能性に挑戦していきます。
一人ひとりを大切に暮らしの基盤を守り続ける
金下建設株式会社
三井 則子さん・宇野 知絵さん
「建設業は、建築物や道路などの整備を通じて、まちを支えられる業種です。特に、天橋立周辺のインフラは観光客の受入れの基盤であり、観光産業と連動して地域の経済を活性化する産業だと思います」バックオフィス業務を担う宇野さんは、建設業に携わる魅力をそう話します。
ひとつの事業に多くの事業者が携わる建設現場。「ひと月に処理する請求書は8 0 0 件ほど。これまで手作業で行っていた業務をシステム化することで、相手方とのやり取りもスムーズになり、請求書の発送コストも押さえられています」そう話すのは、業務のDXを進めてこられた三井さんです。「現場では、快適なトイレ・更衣室の整備を進め、性別問わず働きやすい環境整備を進めています」と宇野さん。そのほか、子育てや介護などの私生活を含めた社員の悩みも汲くみ取り、実際に制度化につなげてきたそう。「どんな状況でも力を発揮できる環境があることは従業員の安心につながります」と三井さんはいいます。
チームでひとつのものを作り上げる会社だからこそ、一人ひとりを大切にする、そんな企業風土がありました。
現場スタッフの声 ~現場監督を務める女性スタッフさん~
工事を進めるためにはお客様、協力業者様、地域の方々のご理解・ご協力がとても大切です。皆さまとコミュニケーションをとりながら、何もない場所から、少しずつ成長させ、竣工(しゅんこう)時の構築物を目にするとき、この仕事で一番の達成感を味わえます。
最後までその子らしくわんちゃんの一生を支えたい
ドッグケアサロンHappeace(ハッピース)
小倉 千佳さん
「犬が好きなので、マッサージをとおして私の方が癒されています」と、好きを生業にする自営業のやりがいについて話すのは、栗田地区で犬向けのトリミングやマッサージを提供する小倉さんです。以前暮らしていた沖縄で、殺処分問題の深刻さを知り、保護活動に携わったことがきっかけで、ご自身でも保護犬を迎えることとなったといいます。トリマーの免許を取得後、東洋医学と出会い、犬向けのマッサージも始めました。昨年には、イベントや自宅でも施術ができるようキャンピングカーを用いた「移動式マッサージサロン」を導入。施術中は、飼い主とも丁寧なお話しを心掛けているそう。「犬も肩こりするんだ、と驚く飼い主さんも多いです。自宅でもできるように、マッサージのやり方をお伝えします。最後まで自分で立って、走って、食べることができる、わんちゃんの健康的な生涯を飼い主さんと一緒に支えたいです」と強い想いをにじませます。「それぞれに合わせた、無理のない施術をしたいです」と続ける小倉さん。
キャンピングカーで、どこへでも移動できるようになった小倉さんは、「全国のわんちゃんの助けになれたら」と笑顔を見せました。
ふるさと納税型クラウドファンディングを活用されました。取り組みの経緯など詳細はこちらから<外部リンク>(クラウドファンディングサイト)
お客さまを迎える働き甲斐のあるホテルへ
株式会社ホテル北野屋
西村 正大さん
文珠地区の高台に位置するホテル北野屋 代表取締役社長の西村さんは、「一期一会で色んな方に会うことができます。再びお越しいただけることもあって、それが楽しみ」と市の基幹産業である観光業の魅力を語ります。
「離職率の高い業界ですが、定休日や勤務時間の整備など、福利厚生を改善し、勤続してくれるスタッフが増えました。また、従業員が『やりがいを感じられているか』は気にしており、ドリンクメニューの考案などをお願いしています。今後も新しいことを任せたいと思います」と働き甲斐のある職場づくりへの想いをお話しされました。
また、ホテル北野屋では、現在、4人の外国人従業員が勤務されています。西村さんは、寮となる住居を探し、母国から離れて暮らす従業員が安心して働けるように環境整備をされてきました。「外国人従業員たちも、お客さまへ感謝のメッセージを書くなど、工夫をしてくれているようです」
「今後、更なる宮津のにぎわいづくりにつながる事業もできれば」と、西村さんは今後の展望をお話しされました。
現場スタッフの声~ホテル北野屋で働く エタヤ パインさん(ミャンマー出身)~
料理の配膳・説明やドリンク作りをしています。色んな国のお客さまとお話しができて楽しいですし、褒めていただけるととても嬉しいです。始めは日本語を間違えることが怖かったのですが、今は、もっと上手になりたいので休みの日にも勉強を続けています。
産業を支える支援機関のご紹介
「使える支援策を知りたいな」「退職後の就業先をどうしようかな…」事業を進める・新たな事業を考えるとき、相談ができる機関があることで安心して前に進むことができるもの。そんな市内の事業者の皆さんを支えるネットワークをご紹介します。
宮津商工会議所
宮津商工会議所は、地域事業者の支援や地域経済の発展に寄与する総合経済団体として約600 の事業者に加入いただいています。専門の経営支援員が複数在籍し、経営計画の作成支援や補助金、融資など経営全般に関する個別相談など、地域の事業者や創業者のチャレンジを全力で応援しています。
また、市内の産業・企業の魅力発信と宮津の賑わいづくりとして、毎年秋に「みやづ産業フェスタ」を開催。人材育成では、京都府立海洋高等学校との連携協定に基づくキャリア教育支援を行っています。その他にも、要望活動や講演会を通じて、事業者や働く人々の支援を総合的に行っています。


みやづ産業フェスタ 海洋高等学校 キャリア教育講演会
お問い合わせ:宮津商工会議所(22-5131)
ハローワーク宮津・北京都ジョブパーク
厚生労働省京都労働局と宮津市では、「宮津市雇用対策協定」を締結しており、合同企業説明会「海の京都 みやづ就職フェア」や就労に関わる情報発信・セミナーに取り組んでいます。イベントの情報は、市公式LINE などで発信していますのでご覧ください。
お問い合わせ:ハローワーク宮津(22-8609)
京都北都信用金庫

京都北都信用金庫では、地域の皆さまの挑戦を支えるため、金融面・非金融面の双方から支援を行っています。創業を志す方には計画づくりから資金相談まで伴走し、既存事業者の方には、販路拡大に向けたイベント出展(写真は地域事業者の皆さまと万博に出展した時の様子です) や外部専門機関と連携した経営に役立つセミナーの開催に注力しています。また、事業承継や副業人材のマッチング支援等の展開に加えて、各種融資制度や補助金活用のサポート、デジタル化、省エネ促進、ソーシャル企業認証制度など事業成長につながる取り組みも推進中です。
今後も地域の皆さまとともに歩み、地域活性化に貢献してまいります。
ご相談お待ちしております。
お問い合わせ:京都北都信用金庫(25-3064)
宮津与謝広域シルバー人材センター
元気で、働く意欲のある60 歳以上の方なら、誰でも入会することができ、会員の希望と能力に応じた仕事に従事されています。親睦会バス旅行やグラウンドゴルフ大会、各種講習会、体験会、趣味の講座など、楽しい催しも。無理のない就業で楽しく社会に貢献しませんか?
こんな仕事があります
除草、剪定、清掃、障子等の張替え、墓掃除、家事援助サービス、施設管理、整理事務ほか
お問い合わせ:(公社)宮津与謝広域シルバー人材センター(25-1560)
働く人 ・ 挑戦する人を応援!
新しいビジネスにチャレンジ!新たな環境で働きたい!そんな想いを応援する制度をご紹介します。(お問い合わせ:商工係 45-1663)
\働きたい子育て世代の方へ/
観光業の職場体験
観光関連施設で職場体験を行っています!小さなお子様がおられる方も、一時保育の利用もできますのでぜひお気軽にご参加ください!
事業の詳細はこちらから
■職場体験実施期間 12 月から令和8年2月まで(うち希望日1日)
■申込期間 令和8年2月6日(金曜日)まで
レポート ~カフェで就業体験~
飲食店で働くのは約10 年ぶりという女性が「HAMAKAZE Cafe」での職場体験に参加。和気あいあいとした雰囲気で体験され、体験後には、「スタッフの方が優しく丁寧に教えてくれた。次回の職場体験でも他の仕事を体験したい」と述べられました。
\奨学金返済の支援をする事業者さんへ/
宮津市中小企業者等奨学金返還支援事業補助金
従業員の奨学金返済を支援する中小事業者に対し、補助金を支援します。
事業の詳細はこちらから
■対象経費 京都府中小企業団体中央会が実施する補助金の2分の1以内
■交付申請期間 令和8年3月20日(金)
\ DX 化などを検討する事業者さんへ/
宮津市事業者DX 対応支援補助金
業務システムや会計システム、店舗の無線LAN 整備・導入に必要な経費を支援します。
事業の詳細はこちらから
■支援額 対象経費2分の1以内 最大10万円
■申込期限 令和8年1月30日(金)
\幅広くPR しながら資金調達ができる!/
宮津市ふるさと納税型
クラウドファンディング活用事業補助金
新たな特産品づくり、ビジネスの創出や地域の活性化に役立てる取り組みなどを支援します。
事業の詳細はこちらから
こんなメリットが!
☑ 寄附者層が広がる!
市のふるさと納税サイトで公開するため、クラウトファンディングだけでなく、ふるさと納税に興味がある方へもPR できます
☑ ファン(支援者) づくりに!
地域と関わるチャンスが生まれ、ファン(支援者)づくりにもつながります!
☑ 補助金の額は市場価値が反映される!
市場評価が高ければ、希望額以上の寄附が集まる可能性も!
\新たに事業を起こしたい方へ/
未来天橋塾
「新しくビジネスを始めたい」「事業を承継したい」「今の事業を拡大したい」―― そんな挑戦者を全力で応援するための事業です。同じ志を持つ仲間と共に実践的な講義や、経営や金融のきめ細かな支援を通じて、スキル向上をサポートします。
事業の詳細はこちらから
(※今年度は募集終了)
レポート ~令和7年度未来天橋塾 9人が卒塾!~
令和7年度は新しく事業にチャレンジしたい方向けのスタートアップ塾7名、事業化を目指し、実践的な支援を希望する方向けのステップアップ塾2名の方が卒塾されました。
先輩起業家や塾生仲間と共にビジネスモデルの使い方や地域資源の活かし方などを交流を深めながら学習してきました。
私たち一人ひとりができること
私たちは経済活動の一端を担う「消費者」です。地域のお店を利用したり、産品を購入したり、そんな日々の行動が地域の経済活動につながり、元気なまちの源となります。産業が活発なまちであり続けるために―― 。それぞれの立場で、できることから始めてみませんか。
