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宮津の宝物を石けんに 〜SAPOのストーリーがある石けん〜
豊潤な山と穏やかな海がもたらす自然の恵み、大地の栄養分をたっぷり含んだ農作物……「SAPO JAPAN」の石けんは、身近な天然素材を使って、昔ながらの製法で一つ一つ丁寧に手作りされています。
宮津市栗田地区に工房を構えるのは、海外生活を経て故郷・宮津に戻った河田恵美(かわだ めぐみ)さん。石けんづくりを通して見えてきた、宮津の新たな魅力に迫りました。
自然から生まれ自然に還る、昔ながらの手作り石けん
ベトナムでの石けんづくりワークショップの様子
河田さんが手がける「SAPO JAPAN」の石けんは、コールドプロセスと呼ばれる製法で作られています。この製法に出合ったのは、翻訳業を営みながら暮らしていたベトナム中部の街・ホイアンでのこと。現地の水が合わず、ひどい肌荒れに悩まされていたところ、青年海外協力隊の隊員から教わったのが、コールドプロセスの廃油石けんだったと言います。
コールドプロセスとは、加熱せずにじっくりと時間をかけて自然に熟成させて作る、伝統的な製法。化学薬品は使用せず、オイルをベースに、ハーブやスパイスなどの天然素材が配合されています。
「この製法は、非加熱なので素材の成分が壊れにくく、約1か月の熟成期間に自然発生するグリセリンによって高い保湿性が保てる点が特徴。使い始めてから、肌荒れがすっかり改善したんです。昔からベトナムにあるハーブやスパイスといった身近な素材で作ることができました。そして何より、自然由来の石けんは微生物の働きで分解されるので、人の身体だけでなく環境にも優しいんです。自分と同様に肌トラブルに悩むベトナムの人たちにも使ってもらいたいと思いました」と河田さん。以来、この素朴な石けんづくりに夢中になったそうです。
石けんは、油脂と水酸化ナトリウムによる化学反応によって作られるため、文系だった河田さんは苦手な化学物質名やオイルの特徴、アロマテラピー、鹸化(けんか:オイルが石けんに変わる化学反応)の知識を独学で習得しました。原材料の組み合わせや配合率などを検証しながら、約1年間トライ&エラーを繰り返し、ようやく納得がいく石けんが完成。2014年には、ベトナムでSAPO HOIANを設立しました。
久々の帰郷で気づいた“宮津の魅力を発信したい”
宮津にUターン後も地元の人向けにワークショップを開催
10年間のベトナム生活を終えて、出身地である宮津市に家族と共に戻ったのは2019年のこと。河田さんは海外経験と英語のスキルを活かして、外国人観光客向けツアーガイドを始めました。ツアーガイドの仕事をするなかで、改めて宮津の自然や暮らし、歴史や文化を見つめ直し、地元での新しいつながりも生まれてきました。そして、そのつながりのなかから見えてきたものがありました。
「知れば知るほど、若い頃は目にとまらなかった宮津の魅力に気付かされたんです。例えばお米。ベトナムは米大国でしたが、日本のお米の旨味とは全然違うんですよ。久しぶりに帰って食べたお米のおいしさと言ったら、涙が出るほどでした。豊かな大地と海、美しい水、自然の恵みをたっぷり吸収した栄養価の高い農産物。知られていないなんてもったいない! 身近な素材を使った石けんを作ることで、宮津の魅力を発信しようと考えたのです」
再び、河田さんの石けんづくりが始まりました。
「石けんにするために素材を探すのではなく、素材がもつ“ストーリー”を知ることで心が動く」と話す河田さん。
栄養豊富な紅芋粕を使用したコールドプロセス石けん「べに芋」
実際に「SAPO JAPAN」の石けんに使われている素材は、丹後地方のものばかり。自然栽培のお米や宮津産の天然柿渋と活性竹炭など。いずれも、厳選されたオイルや精油を配合して、個性豊かに仕上げています。
例えば「自然栽培のお米」、こちらは奥波見地区で農薬・化学肥料不使用でお米をつくる「ズングリファーム」から直接仕入れた米粉と米ぬかを配合しています。本格的な農業経験がないなかで、周囲の農家さんたちに支えられつつ、循環型の自然栽培にこだわる姿勢に「応援したい!」という思いが生まれたそう。
また、紅芋の酒粕もその一つです。これは、宮津市の老舗「飯尾醸造」で紅芋酢を作る際にできたもの。抗酸化物質「アントシアニン」を含み、栄養豊富なだけではありません。飯尾醸造では昭和の中頃から、お酢の原料である米の安全性を守るため米作りに挑戦。三代にわたって当主が苦労を重ね、契約農家さんと共に栽培期間農薬不使用の米作りを成功させました。
もともと、“つくる”ことが好きな河田さん。昔ながらの製法で、米作りから約1年半かけて行われる飯尾醸造のお酢造りと、宮津の美しい自然を守りながら、その魅力を発信したいという熱意に共感したと言います。
奇跡の地形が生んだ海底クレイを石けんに
宮津湾の海底クレイを使用「宮津の風景プレミアムソープ 海底クレイ」
次に出合ったのは、宮津湾底に堆積した泥=クレイでした。川が少ない宮津では、山に降った雨水が地中を通ってゆっくりとろ過され、やがて海底から湧水として湧き出ます。さらに、流れが穏やかな宮津湾の海底に、栄養豊富な泥が堆積。味・大きさ共に類を見ないと称されるトリガイやナマコなど、多くの魚介類を育んでいます。その泥を漁師さんが水深10〜20mの海底から採取し、不純物を除去して石けんに配合したのが、「宮津の風景プレミアムソープ 海底クレイ」です。
宮津湾の海底クレイはまろやかでキメが細かく、臭みもありません。泥の粒子には肌の老廃物や皮脂などを吸着する力があり、この作用を利用した製品はたくさんありますが、国産は珍しいと言います。汚れを吸着しつつ、潤いやミネラルなどの養分も補ってくれるとあって、河田さんもお気に入りだそうですよ。
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「豊かな自然を守る選択」につなげたい
石けんづくりを通して広がった人の輪。生産者さんや漁師さんから学ぶほどに、自然を守りたいという思いを強くしました。
「美しい景観や多彩な食文化を支えているのは、豊かな水なんです。天橋立を象徴する松林を育んでいるのも、海底から湧く真水。山から海へとつながる地形は、長い年月をかけて奇跡的に形成されたものです。だからこそ、この自然を守らなければ。例えば、固形石けんを選ぶだけで、液体のボディソープ3本分のプラスティックゴミを減らすことができます。SAPOの石けんが、自然環境への負荷が少ない選択をすることの大切さを考えるきっかけになればうれしいです」
宮津の美しい海や豊かな自然に育まれた農作物、これらはみな宮津の宝物です。河田さんが石けんに込めた、素材がもつ“ストーリー”を、ぜひ感じてみてください。
<データ>
SAPO JAPAN
京都府宮津市銀丘11
TEL:080-7632-3872
ホームページ https://sapo.handcrafted.jp/<外部リンク>