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みやづ歴史紀行(163回)
涅槃(ねはん)の雀すずめ
「涅槃の雀」は、涅槃会の日に日置上地区の禅海寺と金剛心院の檀家の小学生によって行われる子ども行事です。天明八年(一七八八)頃には、すでに禅海寺の年中行事として記録が残っています。かつては旧暦二月十四日に行われていましたが、現在では三月十四日に実施されています。
行事当日、子どもたちは早朝に手製の布袋を持って集まり、「ネハンノスズメ オシャカノカンジ」と大きな声で唱えながら、各寺の檀家の家々を回り、布袋に米を集めていきます。集落を一巡した後、子どもたちは集めた米を寺に持ち帰り、寺ではそれらをまとめてお釈迦さまにお供えします。後日、子ども達は、再び寺に集まり、住職から「涅槃の雀」の由来とされるスズメとツバメの話など法話を聞いた後、集めてきた米を使った料理をいただきます。
この行事の由来とされるスズメとツバメの物語は、地域によって若干の違いがありますが、日置上集落には次のような話が伝わっています。
釈迦が涅槃に入った際、弟子たちは動物たちにその知らせを国中へ伝えるよう命じました。これを受けたスズメとツバメのうち、スズメはすぐに飛び立って知らせを広めましたが、ツバメは「人前に出るのだから」と黒い衣をまとい、化粧をして頬紅を塗っていたため、出発が遅れてしまいました。その結果、スズメは五穀を食べることを許され、遅れたツバメは虫を食べるように定められたと伝えられています。「涅槃の雀」は、子どもたちをスズメに見立て、お釈迦さまに供える米を集める姿を表す行事と考えられます。
かつては子どもたちが、夜明け前から寺に集まり、学校が始まる直前まで集落を回る元気な声が響いていました。人口減少により、行事の存続が危ぶまれた時期もありましたが、現在も寺院と地域の人々の手によって大切に守り伝えられています。
(宮津市教育委員会)
※涅槃:釈迦の臨終
涅槃の雀で使う布袋







