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蔵書数は約3万冊!宮津市が誇る大政治家は「超」読書家でもあった!

印刷用ページを表示する 記事ID:0017209 更新日:2023年2月15日更新
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2022(令和4)年5月、宮津市鶴賀に誕生した「前尾記念クロスワークセンターMIYAZU」。かつてこの建物は、宮津市出身の政治家で名誉市民の前尾繁三郎(まえお しげさぶろう)の蔵書を管理・公開する「宮津市立前尾記念文庫」でした。
前尾は日本の政治家のなかでも指折りの読書家・蔵書家として知られ、その所蔵数はなんと約3万冊に上ります。今回は、読書家としての前尾繁三郎と、宮津市立図書館内に設けられている「前尾記念文庫」についてご紹介します。

 

前尾繁三郎はどんな政治家だったの?​​

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 前尾記念クロスワークセンターMIYAZUに立つ前尾繁三郎の銅像


1905(明治38)年、京都府与謝郡宮津町(現:宮津市)で生まれた前尾繁三郎。子どもの頃から優秀な成績を収めていましたが、実家の経済的な理由で進学をあきらめていました。ところが、当時、前尾の担任だった西垣延二先生が「学費が足りなければ自分が援助する」と両親を説得。前尾は宮津中学(現:宮津高校)に進学し、卒業後は旧制第一高等学校(現在の東京大学教養学部の前身)、東京帝国大学法学部を経て、大蔵省(現:財務省)に入省しました。
ところが、入省2年目の秋、前尾は病にかかり入院。治るあてもないまま宮津に帰郷し、5年もの長期療養を余儀なくされます。復職後は、和歌山税務署長や主税国税第一課長、主税局長を歴任しました。
その後、大蔵省を退職し、1949(昭和24)年に開かれた第24回衆議院議員総選挙に、旧京都2区から立候補し当選。丹後出身の政治家としては初の大臣として通産相(現:経産相)や法務相を歴任。1973(昭和48)年からは、第58代衆議院議長に就任しました。また、大蔵省時代の先輩だった池田勇人(いけだ はやと)の右腕として、池田政権を補佐したことでも知られています。

 

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      写真右が前尾繁三郎


その大きくのっそりとした風貌からついたニックネームは「牛」。決して弁舌が得意な政治家ではありませんでしたが、実務家として数々の法律の制定に携わったほか、日本貿易振興会(JETRO)、中小企業信用保険公庫の設立などに尽力しました。書物に親しむその生き様は後世にも伝わっています。


前尾繁三郎の蔵書約3万冊が揃う「前尾記念文庫」

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    宮津市立図書館内に設けられた「前尾記念文庫」


前尾は幼い頃から本に親しみ、政治家になった後も東京の神田や本郷にある古書店巡りは欠かさなかったと、自身の著書のなかで触れるほどの読書家でした。特に、字源や語源に深い関心があり『十二支攷(じゅうにしこう)』という干支に関する論考集を残しています。また随筆の世界でも多才な才能を発揮しました。

前尾の死後、ご遺族から膨大な蔵書と多額の文庫建設資金が宮津市に寄贈されました。宮津市では、市民の貴重な財産としてこれらの蔵書を大切に保存するとともに、市民はもとより多くの人に前尾が遺した蔵書の活用を願い、1983(昭和58)年7月23日に「宮津市立前尾記念文庫」を開館しました。7月23日は、前尾の命日にあたる日でもあります。

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宮津市鶴賀にある旧前尾記念文庫(現:前尾記念クロスワークセンターMIYAZU)


2017(平成29)年、現在の場所に図書館が移転するにあたり、蔵書を市民のみなさまが閲覧しやすいように、館内に「前尾記念文庫」を移設しました。文庫内には、30859冊の書籍を所蔵。専門の財政・政治学はもちろん、歴史書や思想書、語義語源の典籍、民俗学、美術書、文学の古典、現代小説や児童書にいたるまで、あらゆる分野にわたる貴重な書籍が並びます。

 

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また前尾は、明治元勲などがしたためた貴重な書簡224点を蒐集(しゅうしゅう)していました。これら資料は、佛教大学(京都市)に調査研究を委託し、研究会が組織され調査を実施。2004(平成16)年に『宮津市立前尾記念文庫所蔵 元勲・近代諸家書簡集成』(思文閣出版)として刊行されました。文庫内には、この書籍も所蔵され、閲覧・貸出が可能です。

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​文庫内には、前尾の業績を讃えて、前尾の経歴や国内外から授かった勲章や功労章の数々、写真や胸像などを展示。前尾繁三郎という偉大な政治家の業績がわかるようになっています


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前尾は生前、多くの書籍に親しむとともに、多くの著作を残しました。税に関する専門書だけでなく、干支に関する語源などを研究した『十二支攷(じゅうにしこう)』『政治家の歳時記』『政治家のつれづれ草』などの随筆集も執筆。「前尾繁三郎先生著作本」コーナーに、これら前尾が手掛けた書籍が集められています。


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幼い頃から文字への関心が高かった前尾。自身の著書『十二支攷(じゅうにしこう)』(前尾繁三郎遺稿集刊行会)のなかにも、それぞれの干支の文字の成り立ちについて触れられています。


​前尾記念文庫の書籍は、図書館の利用者に貸出が可能。それ以外の人でも、来館すればいつでも閲覧できる他、貸出可能な書籍については、居住地の図書館などを通じて相互貸借できるようになっています。(それぞれの図書館で手続きが異なるため、詳しくは居住地の図書館に問い合わせください)


「超」読書家・前尾繁三郎が子ども時代に読んだ本は?

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​「超」がつくほどの読書家、前尾繁三郎の読書遍歴とはどのようなものだったのでしょうか。1974年(昭和49)に出版した『政(まつり)の心』のなかで前尾は、「私の読書遍歴」と題して、自身が初めて読んだ本のことをこう振り返っています。

「物心がつきはじめた時分に手にした本は、もう表題も著者もはっきりは覚えていないが、日本昔噺とか、世界新お伽噺(とぎばなし)とかいった童話の本で、ちょうど明治から大正に改元の頃小学校にはいった私達の時代の者は、巌谷小波(いわや さざなみ)やグリムに直接間接すくなからぬお世話になったものである。」

前尾繁三郎著『政の心』毎日新聞社
※引用文の一部ルビは引用者によるもの

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前尾記念文庫には、『グリム童話集』『アンデルセン童話集』など、児童書も多数所蔵。
前尾が、ジャンルを問わずどん欲に本を読んでいたことがよくわかります。


​また、父から与えられた辞書が自身のライフワークになる文字への興味を持ったきっかけであることや、2人の兄が読んでいた雑誌が自身の読書力を養ってくれたと本のなかで記しています。その一方で、講談(こうだん※)を元ネタに書き上げた立川文庫(たちかわぶんこ)や武士道文庫の虜にもなり、朝から夜寝るまで、学校の行き帰りや授業中の机の下、家の薄暗いランプの下でも本を読みふけっていたという前尾。そんな彼を心配した西垣先生は、学校の図書館からこれぞという良書をセレクトして、特別に貸出を許したそうです。なかでも、南北朝時代の栄枯盛衰を描いた『太平記』は、前尾にとっても生まれて初めて読んだ古典だそうで、著書のなかでも「今でも記憶に残る一冊」に上げています。

​※講談:落語のように演者が高座に座り、尺代と張り扇を使って歴史上の人物の一代記などを語る日本伝統の話芸。
 

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 これら童話集も貸出が可能。前尾が親しんだ本に触れてみませんか。


​宮津のまちで生まれ、幼い頃から多彩なジャンルの本を読んで成長した前尾繁三郎。研鑽を重ねて培った知性や見識は、政界でも一目置かれていたといわれています。ぜひ宮津市立図書館内の前尾記念文庫を訪れて、前尾が歩んできた読書遍歴をたどってみるのはいかがでしょうか。

 

<データ>
前尾記念文庫(宮津市立図書館内)
TEL:0772-22-2730(宮津市立図書館)
住所:宮津市字浜町3012 宮津阪急ビル(宮津シーサイドマートMipple)3階
開館時間:10:00~20:00
休館日:月曜(祝日の場合翌日)、毎月最終木曜(祝日の場合翌日)、年末年始(12月29日~1月3日)、特別整理期間

 

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