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未来の海のスペシャリストを育成!京都府立海洋高等学校

印刷用ページを表示する 記事ID:0012648 更新日:2022年2月2日更新
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「水産や海洋の学習」と聞くと、皆さんはどのような想像をしますか? 広がる海、豊かな自然、海の中で暮らす魚などの生き物たち……。宮津市にある京都府立海洋高等学校は、そんな「海、水産物、船舶」について専門的に学んだり実習したりすることができる、近畿地方唯一の水産・海洋系学科単独の専門高校です。

就職に活かせる専門的な知識と、「実践」や「発揮」を大切にしている海洋高等学校では、地域と連携したプロジェクトもたくさん行っており、その活躍はテレビや新聞などのメディアでも数多く取り上げられてきました。今回はそんな海洋高等学校と、その学びについてご紹介します。

 

創立は明治時代!海洋高等学校ってどんな学校?​

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海洋高等学校は、天橋立から東に約5kmほどの栗田地区にあります。明治31年に創立された水産講習所を前身とし、2021年で創立124年を迎えた歴史のある高校です。
波が穏やかな湾に直結した校舎には実習船も係留されており、水産の学びには絶好の環境となっています。創立以来、地域と連携しながら、水産・海洋関連産業の第一線で活躍できる社会人材を、時代のニーズに応じて育成してきました。

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1年生は「海洋学科群」として海洋に関する基礎的な知識を学び、2年生からは「海洋科学科・航海船舶コース・海洋技術コース・栽培環境コース・食品経済コース」という5つの専攻学科・コースに分かれてそれぞれの専門性を高めます。
それでは、海洋高等学校の生徒のみなさんが普段どのようなことを学んでいるのか、それぞれの学科・コースを紹介していきます。

 

【海洋科学科】研究活動から専門性を高める!

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大学への進学や公務員を目指す海洋科学科では、研究活動やプレゼンテーションにも力を注いでいるのが特徴です。この日の授業では、地元の小学5年生が来校して、コラボ推進プログラムの一環として「海洋ごみ講座」を行っているところでした。

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「海洋ごみ講座」は、海洋科学科の3年生による寸劇を見てもらい、その後栗田浜へ行って、砂の中に埋もれているマイクロプラスチックを調査したり、クイズをしたりしています。小学生に、楽しんでもらいながら海洋ごみ問題について学んでもらうことを目的として行っているものです。

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この取組では、海洋科学科の生徒自身が授業内容を全て考えているそうです。どうやったら楽しんでもらえるか、海洋ごみ問題について理解してもらえるかを真剣に考え、練習を重ねてきたことが窺えました。全力で声を出したり、小学生と話したりしている姿からは、これまで真剣に水産や海洋に関する学びを深め、そこで学んだことを実践している様子が見て取れました。

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実際に栗田浜でごみを拾いながら「これはマイクロプラスチックだね」「これはごみに見えるかもしれないけど、実は魚の鱗なんだよ」など、何気ないやりとりの中でも海に関する話が絶えません。最後には、拾ったごみを紙にキレイに並べていきます。拾ったごみをきれいに並べていくことで、「今日の学びを楽しく覚えておいてもらいたい」と話してくれました。

 

【海洋工学科・航海船舶コース】将来の船乗りとしての資質を磨く!

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船乗りを目指す学習と実践が充実している航海船舶コース。取材当日、3年生は航海実習に行っており、2年生はカッターという船の帆を張る実技テストをしていました。4〜6人のチームで協力して船を帆走できる状態まで準備します。
組み立てる「速さ」はもちろん大切ですが、それ以上に大切なのは「安全に、しっかりと組み立てができているか」です。また、生徒それぞれが連携して作業を行えているかどうかも、とても大切なポイントだそうです。

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カッターのようなそれほど大きくない船から大型の実習船まで、2年生から少しずつ、扱えるように学習していきます。実習船で船舶用レーダーの取り扱いについて学んだり、海図を用いて航海計画を立てたりと、学習内容は専門性が高いものばかりです。

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船に乗る以外の実習もさまざまです。生餌(いきえ)や餌木(えぎ)、駄菓子等で釣りを行い、釣果や魚種の違いを調査するという実習もあるそうです。授業内で実験し、検証していくといった取組も含め、船乗りとしての実践を積極的に行っています。

 

【海洋工学科・海洋技術コース】目指せ!マリンエンジニア

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海洋技術コースは、海洋土木や作業潜水を学び、マリンエンジニアを目指すコースです。マリンエンジニアとは、その名のとおり水中を専門とする技術者。防波堤を施工することも、マリンエンジニアの仕事のひとつです。防波堤は海の底から海上の見える部分まで施工する必要があるので、潜水して正確に据え付ける必要があり、そのために潜水の基礎技術からきちんと学びます。

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取材当日も、生徒たちは潜水授業の真っ最中。潜る前に、海に危険がないか水面の安全を確認してから入水します。海の中では少しのミスが命取りになるので、安全確認を徹底して実習を行います。生徒は黄色のフィンをつけているので、どこにいるか分かりやすいようになっているのも安全に実習するための工夫のひとつです。

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水中カメラを使用して、海中にいる生き物の観察も行います。この日はカマスやネンブツダイ、ミノカサゴなどを見ることができました。
3年生の秋頃、生徒たち自身で作業潜水を完了するのがこのコースの一大イベントだそうです。地上からホースで空気が送られるマスクを使って水中で作業をする人や、地上で空気のホースを捌く人、指示を出す人など、それぞれに役割を持ち、チーム一丸となって安全に作業をするために、潜水技術から水中作業の実習まで、少しずつ練習を重ねていきます。

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チームで安全に作業を進めるためには、技術はもちろん「コミュニケーションが大切」とのこと。みんなの安全のためには、指示や状況をそれぞれ的確に伝えることが必要不可欠だそうです。

 

【海洋資源科・栽培環境コース】魚介類の飼育技術と豊かな海づくりに挑戦!

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魚介類の飼育技術を学べる栽培環境コースの生徒の1日は、水槽や養殖施設の整備から始まります。授業でも、もちろん施設の整備や点検は重ねて行われ、養殖魚の状態管理や餌やりなどが行われています。

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外には大きな水槽があり、そこでは養殖魚の餌となる植物プランクトンが培養されています。授業開始のチャイムと同時に、先生が植物性プランクトンの肥料に必要なものを生徒に尋ねると、次々に材料を答えていきます。あとは今日の作業内容を先生が確認したあと、授業開始から5分も経たないうちに生徒が持ち場へと散らばります。

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施設の奥からゴゴゴ、という音がしたので見に行くと、ミキサーで肥料を作っているところでした。ナンノクロロプシス(海産クロレラ)という植物性プランクトンを培養するための、硫安や過リン酸石灰、尿素などを混ぜた肥料を生徒自身が作っています。

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生徒が日々つけている日誌のフォーマットは、養殖場など実際の現場で使われているものと同じものだそうで、行ったことのメモがずらりと並んでいました。

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授業のほとんどが、社会に出た後の「実践」を前提として考えられています。実際の仕事と授業とのギャップをなるべくなくすため、現場で必要となる知識や技術を授業で身に付けています。
養殖の実務の中でも特に大切なことは「とにかく清潔」であること。生徒たちは当番制で、朝早くから水槽の掃除をしたり、なにか作業をした後でもすぐに現場を片付けたりと、清潔を保ち続ける姿勢が印象に残りました。

先生曰く、「清潔が大事だということは、命を扱う上では当たり前のことです。生徒たちも実際に掃除を行うことでその意味を理解し、仕事の大切さを学んでいけると思います」

 

【海洋資源科・食品経済コース】水産食品の加工や開発に取り組む!

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水産食品の製造から加工、流通までを学び、新製品の開発にも取り組むという実習が特徴的な食品経済コース。魚を使ったオリジナルのスイーツを作ってコンテストに出場したり、地域と協力してホンモロコを使った缶詰を開発したりと、学習内容は多岐に渡ります。この日の授業で生徒たちは、地元で水揚げされた魚を学校給食用に一次加工を行っていました。

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この日の食材は「ヤナギ」という魚。ヤナギは出世魚で、サゴシ、サワラの順で成長していきます。まずは頭を落として、3枚におろします。魚をどんどん捌いて洗い、指定の大きさにカットして、重さを計って分けていくところまでが一次加工。このあとは、給食センターに運ばれて調理されます。
作り手の顔が見えることで、給食を残さずおいしく食べてほしいという願いから始まった、高校生による給食の一次加工。コロナ禍となる前までは、その給食を地域の小学校や中学校の生徒たちと一緒に食べながら、食材の説明をしていたそうです。今はオンラインで説明をするリモート給食を行っているそうです。

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海洋高等学校の生徒の中には、小学生の頃に海洋高校の先輩が一次加工をしてくれた給食を食べていた、という生徒もいます。
「育ててもらって、今も地域に支えてもらっている。これからも水産食品製造や料理で地域に貢献していきたい」と話してくれた生徒の姿は、とても頼もしく感じました。

 

協力しながら安全に「好きなこと」を深める海洋高等学校

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どの学科・コースの授業を見ても、「協力」「連携」という言葉が常に飛び交っていました。そして、どの授業においても生徒が自分自身で考えて動き、学んでいる姿が何よりも印象的でした。知識を深めることはもちろんですが、仲間と力を合わせて取り組むことが一番大切なこと。そして、常にそれを意識した学びができるのが海洋高等学校の強みです。未来の海のスペシャリストとして、国内外に羽ばたいていく海洋高等学校の生徒たちの今後の活躍に期待が膨らみます。

 

<データ>
京都府立海洋高等学校
京都府宮津市字上司1567-1
TEL 0772-25-0331
FAX 0772-25-0332
http://www.kyoto-be.ne.jp/kaiyou-hs/cms/<外部リンク>

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