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喧嘩神輿で男たちが躍動!エネルギー溢れる奇祭「栗田祭」

印刷用ページを表示する 記事ID:0012383 更新日:2021年10月13日更新
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栗田祭

今も昔も漁業が盛んな宮津市・栗田地区の各所で毎年秋に行われる栗田祭(くんだまつり)。中でも住吉神社の祭礼では、荒々しい喧嘩神輿が行われることで知られています。海辺の町で脈々と続く奇祭とは、どんな祭りなのでしょうか。

栗田半島の各地で一斉に行われる秋の祭礼

栗田祭2

祭りの日、男たちの「わっしょい!わっしょい!」という掛け声と怒号が海辺の街に響きます。膝丈ほどの短い裾の着物を纏った威勢のいい担ぎ手たちが大暴れする喧嘩神輿。これは、宮津市の東部に位置する半島部・栗田地区で毎年10 月第2土・日曜日に行われる栗田祭の中の神事の一つです。
栗田地区では十数箇所の神社などでほぼ同時に様々な様式の祭礼が行われ、栗田祭とはそれらの総称。中でも激しい喧嘩神輿で知られているのは、栗田地区の南部にある住吉神社の祭りです。そこでは、上司地区と小寺地区という2つの氏子地区が神輿の先導権を争う、力強い奇祭が行われていました。

 

エネルギーのぶつかり合い!熱く激しい神事

栗田祭3

喧嘩神輿は、押し合いや掴み合いがそこかしこで起こり、昔は怪我人が出ることもしばしばあったという荒々しい神事。御祭神を神輿に乗せる神事・御霊移しが行われたあと、上司地区と小寺地区の氏子たちに担がれた神輿は神社と浜辺を7往復半します。その途中の浜辺近くには、柔らかな砂で整えられた土俵と呼ばれる円形の砂場が。この神聖な土俵の中で、喧嘩神輿が行われます。
喧嘩といってもそこには“神輿の前方の担ぎ棒を奪い自らの肩より高く掲げることができれば勝利”というルールが。つまり両地区は、この担ぎ棒を奪い合う“先棒取り”で争います。片方の地区が棒を奪いかけると対する地区はそれを阻止しようと立ち回り、両者の熱が高まって激しい喧嘩の様相を呈していくのです。
喧嘩神輿を近くで見守るのは、神社の総代たちが務める警護役。礼服姿で、先棒取りの勝敗の判断や白熱しすぎた喧嘩の仲裁などを行います。しかし実際の喧嘩の勢いは、簡単に止められないほどの熱量。そんな時には腕っぷしの強い年長の担ぎ手が仲裁に加担することもあるのだそう。エネルギーがぶつかり合う喧嘩神輿は、見る者も手に汗握るほどの躍動感です。

栗田祭4

実は、喧嘩神輿は一連の神事の中の一つ。祭りの日は一日を通し、様々な神事が連続して行われます。まず早朝には氏子たちが各家々を周り、獅子舞による神楽を奉納。祭りに参加する人たちを清める意味もあると言われています。喧嘩神輿のあとには直会(なおらい)として、両地区が酒を酌み交わす場面も。先ほどまでと打って変わり、和やかな交流のひとときが訪れます。そのあとには、子どもたちも加わり太刀振りの奉納が。太刀振りとは、先に刃のついた長い太刀を手に、笛や太鼓によるお囃子に合わせて力強く舞う神事。府中地区の籠神社で行われる葵祭から伝わったもので、祭りの賑やかしの一つとしての意味合いがあるとも言われています。神社での奉納後はまた各家々を巡って舞いが披露され、長い祭りの一日にやっと幕が下ります。

 

漁場争いの裏に隠されているのは、平穏への祈り

栗田祭5

年に一度、氏子たちが情熱を注いで行う栗田祭。住吉神社に残されている絵画から、少なくとも明治時代にはすでに存在していたことがわかります。地域色が濃く迫力に溢れた祭りだけにルーツが気になるところですが、実は火災による文献の焼失等により、その起源は今に伝わっていません。
喧嘩神輿は、この地域が昔から漁師町として栄えていたことに端を発したものだと考えられています。その昔、栗田の海ではイワシやサバがたくさん獲れ、どの地区の漁師も我先にと魚を奪い合いました。漁場を巡る争いが絶えない中、近隣の地区どうしの日常的ないさかいを避けるべく年に一度の祭りに闘志をぶつけようと、喧嘩神輿が始まったのではないかといわれているのです。

栗田祭6

また、住吉神社の神様はその昔、波のない穏やかな日に凪いだ海からふわふわと浜辺にやってきたという伝承が。そのことから、神輿の担ぎ手たちが着ている白い着物の背中には、今も「不波(ふわ)」の二文字が染め抜かれています。その神様が最初に祀られた場所は現在の住吉神社がある上司地区ではなく、小寺地区内の元住吉と呼ばれる場所だったと伝わっており、これも両地区が喧嘩神輿の形を取り始めた理由の一つではないかといわれています。

このように対立をきっかけに始まった喧嘩神輿。しかし、着物の背にある「不波」には、波のない穏やかな海、つまりは平穏という意味合いも。一見激しくぶつかり合う祭りですが、そこには平和を願う人々の思いが込められているのです。
地元を離れる住人が増えている栗田地区では、祭りの継承は簡単なことではありません。それでも故郷が誇る年に一度の祭りのためにと、氏子地域の若者たちが集まっては翌年の祭りについて語り合う姿がしばしば見られます。漁師町が育んだ稀有な祭りへの情熱は、きっと冷めることなく受け継がれていくことでしょう。

<データ>
栗田祭(住吉神社)
開催日程:毎年10月第2土・日曜日(予定) ※住吉神社での開催は10月第2日曜日(予定)
京都府宮津市上司1332-1
TEL:0772-22-8030(天橋立観光協会)

 

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