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〜天橋立「文殊堂 出船祭」〜 智恩寺に伝わる九世戸縁起の世界へ

印刷用ページを表示する 記事ID:0010819 更新日:2021年8月20日更新
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毎年7月24日に日本三文殊として知られる智恩寺周辺で行われる天橋立「文殊堂 出船祭」。古来より智恩寺文殊堂を中心として栄えてきた文珠地区の夏を象徴するお祭りをご紹介いたします。

 

文殊堂出船祭とは?

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文殊堂出船祭とは、智恩寺の御本尊である文殊菩薩の縁日に合わせて行われる、文珠地区のお祭りです。もとは平安時代後期、文殊菩薩の縁日である7月24日の夜から翌25日にかけて、智恩寺に大勢の僧侶が集まり文殊堂の内陣(内部)にて法要を行い、海岸に万灯(多くの灯明)を照らして菩薩を供養した故事に由来します。

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丹後地域は古くから文殊菩薩への信仰があることから、文珠地区が縁日に合わせて智恩寺に残る伝説「九世戸縁起(くせとえんぎ)」の再現や、花火の打ち上げなど盛大な祭を行い、丹後地方一帯の文殊信仰を代表する大切な行事として行われてきました。

 

祭の主役!「文殊菩薩」と「文殊会」とは?

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智恩寺<外部リンク>の文殊菩薩は智慧(ちえ)を司り、悟りへと導いてくださる仏様です。“智慧”とは仏教用語で物事の“真理を見極めるための力”のことをいいますが、学業成就のご利益があるとしても有名な仏様です。智恩寺建立の由来や伝説が記されている九世戸縁起では、本国土創成時に悪龍を鎮めるために中国の五台山(ごだいさん)から迎えられたと伝えられています。

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文殊菩薩は秘仏とされているため御開扉・御開帳は、お正月・十日ゑびす・出船祭に限られています。御開扉はお顔のみが拝見できる日で、お姿全体を拝むことができる御開帳は出船祭の一日のみ。この日は年に一度の貴重な機会にあたります。

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当日は12時頃から21時頃までご開帳されていますが、19時から行われる「文殊会」では文殊菩薩の御堂の中で、10人を超える同派の僧が左廻りにまわりながら読経する、行道という形式で法要が行われます。これは座ってお経を唱える座誦(ざしょう)に比べ、より格式の高い法要とされています。
このような形式での法要は、江戸幕府が成立し、統一国家制度等が安定した1600年頃からといわれています。智恩寺を中核とした、丹後半島宮津藩の範囲における臨済宗妙心寺派寺院全体により法要が行われるようになりました。

 

文殊菩薩にまつわる「九世戸縁起」とは?

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「九世戸縁起」は京都府指定文化財にも登録されている、天橋立の生成と文殊信仰との関係が説話的に述べられている智恩寺に伝わる古文書です。
その内容は、伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と伊弉冉尊(いざなみのみこと)が日本列島をつくられた神代の時代。丹後半島では悪龍が暴れ、人々が住む事ができませんでした。この事態に困った神様たちは相談し、昔から龍神の導師で智恵第一の仏様である文殊菩薩を中国五台山から九世の戸(天橋立)にお迎えすることにしました。文殊菩薩が慈悲の心で1000年をかけて説法すると、悪龍は改心して善龍になり、今後は仏法を信じて人々を守護することを誓ったといわれています。
この伝説を再現したのが文殊堂出船祭です。

 

海上浮舞台で舞う迫力の演舞!! 海上絵巻「九世戸縁起」

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智恩寺の法要である「文殊会」の後、金引きの滝で演奏されたのが始まりといわれる「火の滝太鼓」の力強い演奏でオープニングを迎え、智恩寺よりいただいた灯明が智恵の輪灯籠へ点火されます。灯篭などに点火する「灯」は、悟り(心・魂)の象徴として仏教で大切にされているもの。無明(闇)を照らす、智恵の光を意味するそうです。​

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回旋橋では悪龍が暴れ、海上浮舞台へと移動する中、それを鎮めるために招かれた文殊菩薩が小舟に乗り、約250本もの松明で照らされた海を渡っていきます。

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文殊菩薩が海上浮舞台へ到着すると、いよいよ悪龍とご対面! 激しく暴れまわる龍の目は赤く光、時には口から炎を吐き出し、龍の恐ろしさに大地が震えるかのように海面では爆竹が鳴り響きます。

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やがて菩薩の説法で悪事を改心した龍は、菩薩とともに歓喜に酔いしれます。2匹の龍が入り乱れて舞う姿はまさに迫力満点! 勢いよく炎を吐く2匹の龍の姿は見応えがあります!!
フィナーレでは約500発の花火が打ち上がり夜空を彩ります。

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海上浮舞台で幻想的に繰り広げられた海上絵巻「九世戸縁起」ですが、21時頃より智恩寺門前まえに移動し、菩薩と龍の力強く華やかな舞を間近で見ることができます。時には市民も龍舞に入り混じり、「九世戸縁起」の世界をより身近に感じる時間。もとは一般の人からのリクエストに応えて舞ったのがきっかけでしたが、好評により恒例になったそうです。

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ところでこの龍、どれくらいの重さなのか気になりませんか? 明確な重さは公表されていませんが、龍1匹につき男性7~8人で操っています。しかし、ひとり1~2分持てるか持てないかの重量! 数名で何度も入れ替わり、総勢30~40人の男性で2匹の龍を操っています。もとは地元の若手で担っていたようですが、いまでは地元企業も協力し、力強い龍舞を演じられているそうです。

文殊菩薩の縁日に、智恩寺で行われる法要の厳かさと、幻想的な海上絵巻で再現される日本神話の世界。古来より文殊堂を中心として栄えてきた文珠地区ならではの特色が色濃く残るお祭りです。

<データ>
天橋立「文殊堂 出船祭」
毎年7月24日開催
場所:天橋立智恩寺近辺

智恩寺について詳しくはこちらの記事をチェック!

 

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