写真提供:京都府立丹後郷土資料館 |
絹本著色十一面観音及観音三十三応現身像
『法華経』観世音菩薩普門品は、『観音経』とも呼ばれ、独立した経典のごとくに扱われるが、この経には観音の名号を唱えるものは、大火、大水、羅刹、刀杖、盗賊等の難を逃れ、淫欲、瞋恚、愚痴を離れ、福徳智恵の男児、端正有相の女児を得ると説き、またこうした救済、饒益のために、観音はその機に応じて三十三に姿を変えて現れると説いている。これが三十三応現身と呼ばれるもので、観音に関して、例えば西国三十三所霊場のように三十三という数が用いられるのは、全てこれに発している。
天長寺本の三幅は、十一面観音を中心にして、三十三身の全てを描いた珍しい画像である。中幅は、唐草文の舟形挙身光背を負って蓮華座に立つ観音像で、右手に蓮華を挿した花瓶を持ち、左手は垂下して錫杖を執るのは、奈良長谷寺の本尊と同形で、いわゆる長谷寺形像である。左右幅は、第一の仏身から、第三十三の執金剛神身までを交互に描きわけ、各身に金泥の短冊形を付し、身名を墨書し、下方には湧雲を描き添えている。観音像は伝統的な仏画の手法で謹直な描写をみせるが、左右幅では形式化が目立ち、制作の時期が若干遅れるかと思われる。
このような三十三応現身を描いたものは、奈良長谷寺の本尊足下の羽目板の板絵が知られており、本尊の形成とあわせ、長谷寺信仰の広がりの中で制作された仏画であることを示している。
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